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11月となり、すっかり朝晩冷え込む季節となりました。
というのは熊本の話でして、北海道でお聞きの皆様には「何を今さら」ということかもしれません。
今月は大阪、名古屋、東京、と連続で講演会を企画していますので、全国走り回ることになりそうです。
その間に神戸や沖縄にもでかけながら小さな会社を切り盛りしていく予定です。
そしてその合間に来年からスタートを目指している器材ライブラリー2.0の準備も進めなくてはなりません。
今回はハードディスクの発送とともにアンケートを同封させていただきました。
皆様のご使用環境を事前に調査し、できるだけ快適な環境を速やかに移行していただけるための情報収集です。忌憚のないご意見と合わせてたくさんのご回答をいただければ幸いです。
今回のトピックは以下の3つです。
- 株式会社ビーブランドメディコーデンタルからシロティ&ビーポリッシュが発売されました。
- 2006年ワールドデンタルショーにて収集した各社カタログを追加しました。
- ジーシー石膏関連製品が12月1日に値上げされます。
スタート以来、業界人のインタビューを中心に構成してきましたコラムのコーナーですが、さすがにこの勢いを続けると、あっという間に知り合い全員を網羅してしまいそうなので、しばらくインタビューは不定期でやっていこうと思います。
今回は本来のコラム、という題名が示す初心に返りまして、私の思ういろんなことをお話ししてみようかな、と思ってます。
今回のテーマは、「エージェントとは何だったのか」。
エージェント、直訳すると代理人、代理店、特約店、仲介者、斡旋人と辞書には書いてありました。
私たちの業界で言えば、まさしく私たち歯科商店はエージェント以外の何者でもないわけです。
仕入先のメーカーによってたとえば特約店と呼ばれたり、販売代行店であったり、協力店であったり、いろいろな名称の契約が存在しているわけですが、いずれにしても僕らはエージェントに他ならないと思います。
ところで、その契約書を読んでみると、表現はさまざまですけど、私たちの仕事とは「メーカーの製品をいかにして効率よく紹介し、流通させ、きちんとお使いいただけるようにアフターサービスするか」などといったことが書いてあります。
ぜひいちど目を通してみてください。
つまり、本来はメーカーさんが直接歯科医院や歯科技工所を回って商品を紹介し、お届けし、修理するという一連の行動こそが前提であり、それを私たちは契約に基づいて代行している、というイメージではないかと思うのです。その仕事の成果として、粗利という形の報酬を得ているわけです。
近年その粗利率の低下が問題となっています。
つまり安売りの問題ですが、その原因は何なのでしょうか?
競争の激化や通販問題など1日では語り尽くせない議論となってしまうわけですが、乱暴にまとめてしまえば、僕らのやるべき仕事が減っている、という一言に尽きるのではないかと思うのです。
すなわち通信や物流が発達し、しかも昔ほど新しい器材が出現しにくくなった21世紀において、20世紀では歓迎されたメーカーさんの代行業という役割が、小さくなってしまったのではないかな、と考えることもできるのではないでしょうか。
そんな結論をだしてしまえば、僕ら歯科商店にとって、とても暗い未来を語らなければならなくなります。
すなわち、メーカーさんがダイレクトに大型商談をまとめ、日常の流通は通販業者がメインとなってしまった未来です。
しかし現実を見渡してみると、すでに私たちの事務所ではデルやアップルのネットダイレクトショップでパソコンを購入し、ソフトをダウンロードし、アスクルからはファイルやコピー用紙を買っているのです。
よほど大きな事務所でない限りは、昔ながらの文具店営業が定期訪問してきたりはしないのではないでしょうか?
さて、ここで話を終えるわけにはまいりません。僕はそういうことを言いたくてこの番組を始めたのではないのです。
ここでエージェント、という言葉を思い出してみることにします。
代理人、という意味だったと思います。さきほどは何の疑念もなく「メーカーさんの代理人」であるという前提で話をしてきました。そしてその意味において、もはや代理人の役割が減りつつある、という現実を見てきました。
しかし私は思うのです。代理人という意味には、もうひとつあるはずだ。すなわち、商品を購入する側、僕たちで言えば歯科医院や歯科技工所の方々の代理人でもあったのではないか、ということについて考えてみたいと思います。
歯科材料とは異常なまでに商品点数が多く、何がもっとも有利で有効でお得なのか、僕らプロでも混乱してしまう世界が広がっています。
まして臨床家の先生や受付の女性達にとって、そういった混沌とした有象無象から、最適な器材の仕入れや設備投資、メインテナンスを選び分けることは可能なのでしょうか。
可能であったにしても、本来の仕事である患者さんへのサービスを圧迫するくらいに大変な仕事なのではないでしょうか?
だとすれば彼ら彼女らはその困難で得るところの少ない仕事を誰かに任せてしまいたい、と思わないはずはないのです。
当然素人には任せるわけにはいきません。
なぜなら小さな一つの材料であってもそれは医療に必要なモノであり、大げさに言えば患者さんの人生を左右するかもしれないからです。
メーカーの代理人としては夢を広げることが難しい僕らの仕事ですが、臨床家のみなさんの代理人としてであれば、どうでしょうか?
僕らは業界の表裏を知り尽くした業界人として、彼らのもっとも最適な選択をサポートしているのです。
これは何も新しい仕事を始めよう、ということでもなんでもなく、歯科商店が毎日、日常的に行っている業務を、今までと違う側面から眺めてみるだけで、明るい未来を描くことができるのかもしれませんよ、というのが今回の僕の提言です。
もちろん代理人として選ばれるために必要なことが山ほどあります。商品知識もカタログに書いてあるようなことだけではなく、臨床的にどのような意味を持つのか、ライバル製品との差は何か、発売前の海外や大学での評価はどうだったのか、その医院においてスタッフの時間的技術的に使いこなせるモノなのか、投資に対するリターンはどう予想されるのか、アフターサービスや管理に要するコストはどうなのか・・・それらを院長先生と一緒になって考えるだけの技量を必要とされることでしょう。
しかし、それらは多かれ少なかれ今でもやっていることではないでしょうか。ただ、僕らはあくまでメーカーの商品を売ることが目的であって、売るためには仕方なく業務外の知識を身につけなければならない、と考えているところがあります。
今日申し上げたいことは、そういった今までで言えばしぶしぶ行っていたサービスこそが、もしかしたらお客さんからもっとも必要とされていたことかもしれませんよ、ということです。
顧客の要望をかなえることさえできたら後は簡単です。いかにしてそれをビジネスとして成立させるか、ということです。これは各社が頭をひねって試行錯誤すれば、いろんな解決策がでてくることと思います。
今回のコラムでは「私たちはメーカーのエージェントであると同時に、顧客の代理人でもあるのでは」という提案をしてみました。異論反論あるかと思いますが、何かの議論のきっかけにしていただければ、幸いです。
では、次回は11月中旬にお届けの予定です。また、ご期待くださいませ。
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